名古屋地方裁判所 平成10年(ワ)2832号 判決 2000年1月24日
第一事件原告
金吉賜
ほか一名
被告
稲垣英一郎
ほか二名
第二事件原告
金吉賜
ほか一名
被告
増田梅子
主文
一 第一事件被告布目和一は、両事件原告朴順美に対し金六四七四万二六七七円、同金吉賜に対し金四三一六万一七八四円及びこれらに対する平成九年一〇月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 第一事件被告戸松三枝は、両事件原告朴順美に対し金三二三七万一三三八円、同金吉賜に対し金二一五八万〇八九二円及びこれらに対する平成九年一〇月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 第一事件被告稲垣英一郎は、両事件原告朴順美に対し金一六一八万五六六九円、同金吉賜に対し金一〇七九万〇四四六円及びこれらに対する平成九年一〇月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 第二事件被告増田梅子は、両事件原告朴順美に対し金一六一八万五六六九円、同金吉賜に対し金一〇七九万〇四四六円及びこれらに対する平成九年一〇月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五 両事件原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
六 訴訟費用はこれを二分し、その一を両事件原告らの負担とし、その余を第一事件被告ら、第二事件被告の負担とする。
七 この判決は第一項ないし四項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 第一事件被告布目和一(以下「被告布目」という。)は、両事件原告朴順美(以下「原告朴」という。)に対し金一億三五〇七万七四〇〇円、同金吉賜(以下「原告金」という。)に対し金九〇〇五万一六〇〇円及びこれらに対する平成九年一〇月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 第一事件被告戸松三枝(以下「被告戸松」という。)は、原告朴に対し金六七五三万八七〇〇円、同金に対し金四五〇二万五八〇〇円及びこれらに対する平成九年一〇月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 第一事件被告稲垣英一郎(以下「被告稲垣」という。)は、原告朴に対し金三三七六万九三五〇円、同金に対し金二二五一万二九〇〇円及びこれらに対する平成九年一〇月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 第二事件被告増田梅子(以下「被告増田」という。)は、原告朴に対し金三三七六万九三五〇円、同金に対し金二二五一万二九〇〇円及びこれらに対する平成九年一〇月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、被告布目運転車両(以下「布目車」という。)と訴外亡稲垣力男(以下「亡稲垣」という。)運転車両(以下「稲垣車」という。)が衝突した交通事故により、稲垣車に乗車していた訴外金本真一こと金真一(以下「亡真一」という。)が死亡したことに基づき、亡真一の相続人である原告らが亡稲垣の相続人に対しては自動車損害賠償保障法三条による損害賠償を、被告布目に対しては民法七〇九条による損害賠償を請求した事案である。
一 争いのない事実等(証拠を示した部分以外は争いがない。)
1 交通事故の発生
日時 平成九年一〇月二四日午前零時三〇分ころ(甲二七、乙一)
場所 名古屋市中川区中島新町二丁目八〇一番地先交差点(以下「本件交差点」という。)
事故態様 亡真一が乗客として同乗した亡稲垣運転の個人タクシー(稲垣車)と被告布目運転の普通乗用車(布目車)とが、交通整理の行われていない本件交差点で出合い頭に衝突した。
2 亡真一は、本件事故により脳挫傷、頸髄損傷の傷害を負い、平成九年一〇月二四日から六日間社会保険中京病院に入院して治療を受けたが、同月二九日死亡した。
3 亡真一は韓国国籍であり、原告朴は亡真一の妻、同金は亡真一の子である
(甲五ないし八)。
4 亡稲垣は、稲垣車の所有者で、本件事故当時稲垣車を運行の用に供していた。
5 亡稲垣は、平成九年一〇月二四日死亡し、被告増田は亡稲垣の姉(父のみを同じくする)、被告戸松は亡稲垣の妹、被告稲垣は亡稲垣の兄(父のみを同じくする)稲垣英光(平成五年五月六日死亡)の子である。
二 争点
1 被告布目の過失の存在
2 本件事故による損害
(一) 原告らの主張
(1) 入院雑費 九〇〇〇円
(2) 葬儀費用 一五〇万円
(3) 逸失利益 一億七三二五万円
亡真一は、本件事故当時三〇歳で、有限会社カネ鉄商会(以下「訴外会社」という。)の代表取締役として訴外会社より年一二〇〇万円の報酬を得られる予定であったが、本件事故により就労可能な六七歳までの得べかりし利益を喪失した。
1200(万円)×(1-0.3(生活費控除))×20.625(新ホフマン係数)=1億7325(万円)
(4) 慰謝料 三〇三〇万円
<1> 傷害による慰謝料 三〇万円
<2> 死亡による慰謝料 三〇〇〇万円
被告布目は、飲酒運転、徐行義務違反、制限速度超過等の違反行為を犯し、亡真一及び亡稲垣を死亡させる大事故を起こしたにもかかわらず、自己の責任を免れるために、虚偽の事実の申立てをしただけに止まらず、証拠隠滅行為にまで及んでおり、悪質極まりなく、反省の態度及び被害者に対する謝罪の態度が認められないから、懲罰的慰謝料を斟酌すべきである。
亡真一は、妻である原告朴と平成九年二月九日に出生したばかりの長男の原告金との三人家族の一家の支柱であった。
(5) 弁護士費用 二〇〇七万円
(6) 合計 二億二五一二万九〇〇〇円
(二) 被告布目の認否等
亡真一が本件事故当時三〇歳であったことは認め、亡真一が原告ら家族の一家の支柱であったことは不知、その余は否認する。
なお、亡真一が座席ベルトをしていなかったことは明らかで、これがために損害の拡大を招いた可能性が極めて高い。現在の三点式座席ベルトの安全性を考えれば、これを装着せず死亡という重い結果を招いたことは、たとえ損害の拡大との因果関係が肯定できなくても、慰謝料算定(減額)の一事情としては考慮されるべきである。
(三) 被告戸松、同稲垣、同増田の認否
損害額は争う。
第三争点に対する判断
一 争点1(被告布目の過失)について
1 前記争いのない事実等並びに証拠(甲二四、二八、三〇、三六、三七、四一、四七、四八、五〇)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められこれを覆すに足りる証拠はない。
(一) 本件事故の発生した本件交差点付近の状況は別紙交通事故発生現場見取図(以下「別紙図面」という。)記載のとおりであり、布目車は中郷五丁目方面から国道一号線方面に向かって進行中に、稲垣車は荒子川方面から法華一丁目方面に向かって進行中に、それぞれ本件交差点に進入し、本件交差点内で両車が衝突した。
(二) 布目車及び稲垣車が進行していた道路にはそれぞれ最高制限速度時速三〇キロメートルの規制があり、本件事故当時本件交差点に設置された信号機の表示は布目車進行道路側が黄色の点滅を、稲垣車進行道路側が赤色の点滅を示していた。なお、本件交差点北側の布目車進行道路からは、高さ一・六メートルのブロック塀等により、稲垣車が進行してきた道路の見通しが悪い状況にあり、本件交差点東側の稲垣車進行道路からも同様に高さ一・六メートルのブロック塀等により、布目車が進行してきた道路の見通しが悪い状況にあった。
(三) 被告布目は、別紙図面<1>地点付近で本件交差点に設置された信号機が黄色の点滅を表示しているのが目に入ったが、深夜で車両や人の通りが閑散で左右から何も走行してくる様子がなかったので減速することなく時速約五〇キロメートルで本件交差点に進入しようとした。そして、被告布目は、別紙図面<2>地点付近で初めて左方から走行してくる稲垣車を発見し急制動の措置を講じたが、ブレーキが効く前に別紙図面<×>地点付近で稲垣車右側後部に自車を衝突させた。
以上のとおり認められる。
2 前記認定の事実によると、本件交差点において交差する東西方向道路側の見通しが悪く、また前方の信号機も黄色の点滅を表示していたのであるから、被告布目は、本件交差点に進入する前に減速し、少なくとも安全な速度で、また、交差道路の安全を確認しつつ自車を進行させる義務があったにもかかわらずこれを怠り、制限速度である時速三〇キロメートルを超える時速約五〇キロメートルの速度で漫然と本件交差点に自車を進入させた過失があったと認められる。
二 争点2(本件事故による損害)について
1 入院雑費 七八〇〇円
前記のとおり本件事故後亡真一は死亡するまで六日間の入院をしていたところ、右期間中の亡真一の入院雑費は一日当たり一三〇〇円を要したものと認められ、これによるとその合計額は頭書金額となる。
1300(円)×6(日間)=7800(円)
2 葬儀費用 一二〇万円
亡真一の死亡に伴う葬儀の費用として本件事故と因果関係ある損害としては頭書金額をもって相当と認める。
3 逸失利益 七七〇九万六六六二円
(一) 前記争いのない事実等並びに証拠(甲五ないし八、五一、五二、乙四、六の2、証人金本正一)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。
(1) 亡真一は、昭和四二年八月三〇日出生し、本件事故当時三〇歳であった。亡真一は、平成八年六月九日、原告朴と婚姻し、平成九年九月一七日、子である原告金が出生した。
(2) 亡真一は、以前から後記カネ鉄商会に勤務していたが、訴外会社の設立に伴い平成九年一〇月二二日ころ、訴外会社の代表取締役に選任された。そして、訴外国本聖浩(以下「訴外国本」という。)及び訴外浅井正夫(以下「訴外浅井」という。)が、同じころ、訴外会社の取締役に選任された。
(3) 訴外会社は、亡真一の父が個人で営んでいた鉄板加工等を行うカネ鉄商会の営業を引き継ぎ、平成九年一〇月二二日、いわゆる休眠会社であった株式会社金本鋼業を組織変更して設立した会社である(同月二四日登記)。そして、訴外会社の設立当初の資産は、貸借対照表上、資本金は三〇〇万円であって、資産の部の合計は約五二二万円であった。
以上のとおり認められる。
(二) 原告らは、亡真一が訴外会社の前身であるカネ鉄商会で稼働していたところ、本件事故当時訴外会社の代表取締役として選任され報酬として年額一二〇〇万円の支払を受ける予定であった旨主張し、証拠中(甲四、一六、一七、一八の1ないし9、一九ないし二二、三九、五一、五三、証人金本正一)には右主張に沿う部分もある。
すなわち証拠(甲五一、証人金本正一)中には、亡真一が従前カネ鉄商会に勤務し年間一一六〇万円の賃金を得ていたこと、本件事故の二日前である平成九年一〇月二二日に訴外会社の代表取締役に選任され、報酬として年間一二〇〇万円が支払われることになったこととする部分がある。しかし、証人金本正一はカネ鉄商会を平成六年ころから経営し年間二億三〇〇〇万円から二億四〇〇〇万円の売上げがあったが、平成九年ころまで納税をせず確定申告もしていなかったとするが、これを裏付ける証拠は全くない。そして、前記のとおり実質的にカネ鉄商会の営業を引き継いだとされる訴外会社の設立当時、訴外会社の資産は貸借対照表の資産の部を合計しても約五二二万円にとどまり、亡真一に年間一〇〇〇万円を超える賃金ないし報酬を支払い得るほどの資産状況にあったとは考えられないことからすると、証人金本正一の亡真一の収入に関する前記供述等は信用できない。
また、亡真一の報酬を年額一二〇〇万円とする旨決定した社員総会議事録(甲四)、訴外会社の前身であるカネ鉄商会から亡真一に年間一一六〇万円の賃金が支払われたことを示す賃金台帳、給与支払証明書(甲一九ないし二二)の記載を裏付ける亡真一の納税証明書、源泉徴収票等客観的な資料はない。そして、カネ鉄商会の損益計算書(甲一六、一七)についても、証人金本正一によれば右計算書は本件訴訟のために作成されたものであることが認められるところ、右計算書の信用性につき本件訴訟において問題となったにもかかわらず右計算書を作成する根拠となった資料が提出されないなど信用性に疑いがある。また、亡真一のカネ鉄商会での就労状況を示す証拠として提出されたタイムカード(甲一八の1ないし9)の中には、亡真一とは異なる者の氏名部分を修正液等で抹消した部分に亡真一の氏名が記載されているものがあり、そもそも亡真一自身のタイムカードであったのかにつき疑いが残り、結局、亡真一の生前の収入額を示す客観的な証拠はない。
なお、証拠(甲五三ないし五五)中には、本件事故後である平成一〇年に、訴外会社の取締役である訴外国本、訴外浅井に対し、それぞれ八〇〇万円、六〇〇万円の報酬が訴外会社から支払われたとの記載があるが、同人らについての納税証明書等の提出はなく、その記載に疑問がある。また、証拠(甲八、五三、乙三、証人金本正一)によると本件事故後の訴外会社の代表取締役が亡真一の親族(弟)である訴外金本義幸であることが認められ、これによると本件において多額の請求が認容されるため、同人らにつき同年に限って故意に報酬額を増額することも容易であるといわねばならず、したがって前記判断を覆すものではない。
(三) もっとも、前記争いのない事実等並びに証拠(甲五二、乙二、四、六の1、証人金本正一)及び弁論の全趣旨によると、訴外会社の組織変更による設立登記、亡真一を訴外会社の代表取締役とする登記、訴外会社の商号変更の登記、本店移転の登記の各申請がいずれも本件事故の当日である平成九年一〇月二四日にされていること、右各申請手続は司法書士に委任した上で司法書士によりされていること、亡真一は本件事故後六日間社会保険中京病院に入院して治療を受け、同月二九日死亡したことが認められ、右各登記申請に必要な書類を整え、さらに司法書士に登記申請を委任した上で司法書士による登記申請がされるまでには一定の期間を要すると考えられること、右各登記申請がされた日には、亡真一は未だ生存しており病院において治療を受けていたのであり、そのような状況の下で亡真一の父である訴外金本正一らにおいて訴訟に至った段階のことを考慮して周到に亡真一が訴外会社の代表取締役となった外観を作出する準備をし右各登記申請にまで至ったとは考え難いことからすると、前記認定のとおり、亡真一が訴外会社の代表取締役に就任する予定であったこと自体はこれを認めることができる。
そして、これらの事実に照らすと、亡真一は、少なくとも本件事故時である平成九年賃金センサス第一巻第一表・産業計・企業規模計・学歴計・全年齢・男子労働者の平均賃金額(五七五万〇八〇〇円)に相当する収入を六七歳までの三七年間得られたものと推認するのが相当である。
そして亡真一の前記家族状況、代表取締役としての職務に照らし生活費として三五パーセントを控除し、年五分の割合の新ホフマン係数を用いて現価を計算すると、七七〇九万六六六二円となる。
575万0800(円)×(1-0.35)×20.625=7709万6662(円)
4 慰謝料 二五一〇万円
(一) 傷害慰謝料 一〇万円
前記認定のとおり、亡真一は本件事故により脳挫傷、頸髄損傷の傷害を負い、平成九年一〇月二四日から死亡するまで六日間の入院治療を受けた。右傷害に対する慰謝料としては一〇万円をもって相当と認める。
(二) 死亡慰謝料 二五〇〇万円
前記のとおり亡真一は原告ら家族の一家の支柱であったこと及び本件事故態様等を総合して考慮すると、本件における亡真一の死亡慰謝料としては二五〇〇万円をもって相当と認める。
なお、被告布目は、亡真一が本件事故時座席ベルトをしていなかったことを慰謝料減額の一事情として考慮すべきである旨主張する。確かに、道路交通法上自動車の運転者は、他の者を運転者席の横の乗車装置以外の乗車装置に乗車させて自動車を運転するときは、その者に座席ベルトを装着させるよう努めなければならないと規定されており、後部座席に乗車した場合であっても座席ベルトを装着した方が望ましいとはいえる。しかし、前記認定のとおり亡真一は亡稲垣運転のタクシーの乗客として稲垣車の後部座席に乗車していたのであり、前記のとおり道路交通法は直接には運転者以外の同乗者への座席ベルト装着義務を規定していないことも考慮すると、亡真一が座席ベルトを装着していなかったことをもって慰謝料を減額する一事情として考慮することは相当でない。したがって、これと異なる被告布目の主張は採用できない。
5 弁護士費用 四五〇万円
本件認容額、事案の難易等を総合して考慮すると、本件の弁護士費用として本件事故と相当因果関係のある損害としては四五〇万円をもって相当と認める。
6 合計 一億〇七九〇万四四六二円
三 被告布目及び亡稲垣の損害賠償債務の関係
被告布目は不法行為に基づく損害賠償債務を、亡稲垣は自動車損害賠償保障法三条に基づく損害賠償債務を負うところ、両者は共同不法行為者として原告らに対しいわゆる不真正連帯債務の責めを負うものである。
四 相続
1 亡稲垣について
前記によれば、亡稲垣は平成九年一〇月二四日に死亡し、被告増田は亡稲垣の姉(父のみを同じくする)、被告戸松は亡稲垣の妹、被告稲垣は亡稲垣の兄(父のみを同じくする)稲垣英光(平成五年五月六日死亡)の子であるというのであるから、被告戸松は二分の一、被告増田及び被告稲垣は各四分の一の割合で亡稲垣を相続又は代襲相続した。したがって、被告らは右各割合に応じて本件交通事故に基づく損害賠償債務も相続したことになる。
2 亡真一について
前記認定によれば、亡真一が平成九年一〇月二九日に死亡したこと、亡真一が韓国国籍であったこと、原告朴が亡真一の妻であったこと、原告金が亡真一の子であったことが認められる。そして、韓国国籍であった亡真一の死亡に伴う相続については、法例二六条に従い大韓民国法が適用されるべきところ、同国民法によると(1)財産相続については、本件のような場合、被相続人の直系卑属と被相続人の妻が第一順位の相続人で、共同相続人となること(同法一〇〇〇条一項一号、一〇〇三条一項)、(2)妻の相続分は直系卑属と共同で相続するときは、直系卑属の相続分の五割が加算されること(同法一〇〇九条二項)が、それぞれ定められている。
そこで、本件につき右各規定を適用すると、亡真一の妻である原告朴は五分の三の、亡真一の子である原告金は五分の二の相続分をそれぞれ有することになる。したがって、原告らは、本件損害賠償請求権を右各相続分に従い相続したことになる。
五 結論
以上から、被告布目は不法行為に基づく損害賠償債務として、原告朴に対し前記損害額の合計一億〇七九〇万四四六二円の五分の三の割合に相当する六四七四万二六七七円、原告金に対し五分の二の割合に相当する四三一六万一七八四円及びこれらに対する本件事故日である平成九年一〇月二四日から支払済みまで年五分の割合による民法所定の遅延損害金の支払義務がある。
また、亡稲垣は原告らに対し、自動車損害賠償保障法三条に基づく損害賠償債務として、前記同額の損害賠償債務を負っていたところ、その死亡により、相続人である被告戸松、同稲垣及び同増田は前記相続分に従った損害賠償債務を相続により承継したので、結局、被告戸松は、自動車損害賠償保障法三条に基づく損害賠償債務として、原告朴に対し三二三七万一三三八円、原告金に対し二一五八万〇八九二円及びこれらに対する本件事故日である平成九年一〇月二四日から支払済みまで年五分の割合による民法所定の遅延損害金の支払義務があり、被告稲垣及び被告増田は同様にそれぞれ原告朴に対し一六一八万五六六九円、原告金に対し一〇七九万〇四四六円及びこれらに対する本件事故日である平成九年一〇月二四日から支払済みまで年五分の割合による民法所定の遅延損害金の各支払義務がある。
したがって、原告らの本訴各請求は、右の限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないから失当としてこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 北澤章功 堀内照美 山田裕文)
(別紙) 交通事故発生現場見取図
<省略>